こんにちは。
看護師という仕事は「尊い」「やりがいがある」「誇れる仕事」などとよく言われますが、その裏側では現場の厳しい実情に直面している看護師が多いのも事実です。
実際、ある調査によると、看護師の9割以上が「辞めたいと思ったことがある」と回答しています。
【看護師を辞めたい理由ランキング】経験者182人アンケート調査より
この数字、驚きませんか?
今回は、現役看護師としての経験を交えながら、辞めたい理由としてよく挙がるトップ3を解説します。
そして、その背景にある業界全体の問題点や、辞めたくても辞められない現状についても詳しくお伝えしていきます。
看護師が「辞めたい」と感じる理由1位:「激務すぎる・残業が多い」
看護師が辞めたい理由の中で最も多く挙がるのが「激務すぎる・残業が多い」というものです。
これは誰が見ても納得せざるを得ない理由ではないでしょうか。
看護師の仕事は、病院や施設によって違いはあるものの、基本的に常に忙しいものです。
日勤では患者さんのバイタルチェックや点滴の管理、記録の作成など多岐にわたる業務をこなしながら、急変する患者さんの対応に追われます。
一方、夜勤では少ない人員で多くの患者さんを見守り、緊急の事態に備えなければなりません。
さらに、日々の業務だけではなく、委員会活動や勉強会、新人指導といった「付加的な仕事」が看護師には山ほどあります。
こうした業務が原因で、定時に帰れることなどほとんどありません。
例えば、私の勤務していた病院では、日中に対応しきれなかった書類仕事や患者さんの記録整理を夜遅くまで行うことがしばしばありました。
それに加えて、月に数回のイーラーニング研修や看護技術の復習など、自宅に帰ってからも仕事に時間を取られる日々が続きます。
これでは、プライベートの時間などほとんどありません。
サービス残業が常態化している施設も少なくなく、「これだけ忙しいのに、なぜ正当に評価されないのか」と不満を抱える看護師も多いのが現実です。
また、スタッフ不足が原因で一人ひとりの負担が増え、さらに仕事が回らなくなる悪循環が起こっています。
この激務に耐えきれず、「もう辞めたい」と思う看護師が後を絶たないのも納得のいく話です。
理由2位:「職場の人間関係が悪い」
看護師が辞めたい理由の第2位は、「職場の人間関係が悪い」です。
どの職場でも人間関係の問題はありますが、看護師の現場では特に深刻です。
まず、看護師の世界には、いわゆる「お局様」や先輩看護師による強烈な上下関係が根付いている場合が多いです。
一部の先輩が新人や若手に対して高圧的な態度を取ったり、小さなミスを執拗に責めることで、心理的に追い詰められる若手看護師も少なくありません。
私も新人時代には、ちょっとした判断ミスをしただけで「何でこんなこともできないの?」「看護師に向いていないんじゃない?」と厳しく叱責された経験があります。
その時は、自分の不甲斐なさに涙を流しましたが、同時に「どうしてこんなに厳しく責められなければならないのだろう」と理不尽さも感じていました。
さらに、多職種との連携もストレスの一因になります。
看護師は医師や薬剤師、介護士などさまざまな職種と協力しながら働かなければなりませんが、職種間で意見が合わないことも多々あります。
たとえば、医師から「今すぐこれをやって」と一方的な指示を受けたり、介護士から「それは看護師の仕事でしょ」と押し付けられたりすることがあります。
こうしたストレスフルな環境の中で働き続けることは容易ではなく、人間関係の悩みが「辞めたい」と感じる大きな原因になっています。
理由3位:「患者や患者家族の理不尽な態度」
辞めたい理由の第3位は、「患者や患者家族の理不尽な態度」です。
看護師は「人の命を守る」という非常に尊い仕事をしていますが、その一方で、理不尽な要求や暴言に悩まされることが少なくありません。
例えば、ある患者さんから「看護師なら24時間対応するのが当然だろう」と無茶なお願いをされたり、患者家族から「うちの親にもっと気を配って」と責められたりすることがあります。
また、患者さんの急変時に全力を尽くしても、「対応が遅い」と文句を言われることもあります。
私自身も夜勤中に経験したことですが、ある患者さんが急変し、その対応に追われている間に別の患者さんの対応が遅れてしまいました。
その際、家族から「看護師がもっといればこんなことにならなかった」と怒鳴られたことがあります。
この時は本当に悔しくて、自分の無力さを感じましたが、冷静に考えればこれは看護師個人の責任ではなく、現場の人手不足や制度の問題です。
こうした理不尽な状況が続くと、「看護師はどうしてこんなに我慢しなければならないのか」と疑問を感じ、辞めたいと思う気持ちが強くなります。
看護師が「辞めたい」と思うのは個人の問題ではない
これまで挙げた3つの理由は、どれも看護師個人の問題ではなく、業界全体の構造的な問題です。
例えば、患者対看護師の比率は法律で定められていますが、その基準が現代の高齢化社会には全く適していません。
また、診療報酬の仕組みも現場の状況に合わず、施設側が十分な人員を確保できない原因になっています。
さらに、看護師の過重労働を防ぐための制度や、人間関係の改善に向けた取り組みが十分に行われていないことも問題。
これらの課題を解消しなければ、現場の看護師たちの負担は軽減されず、「辞めたい」という気持ちを抱える人が増え続けるでしょう。
辞めたいけど辞められない現実
「辞めたい」と思いながらも、実際には辞められない看護師が多いのも現実です。
その理由の一つは経済的な事情です。
看護師は専門職であり、収入が安定しているため、他の仕事に転職することへの不安が大きいです。
また、「辞めたら職場が回らなくなるのでは」という責任感や、「患者さんを見捨てることになるのでは」という罪悪感を抱えている人もいます。
さらに、看護そのものが好きで、「本当は続けたいけど、環境が厳しすぎる」というジレンマを抱える人も少なくありません。
まとめ
毎回こうした調査結果を見るたびに、「なぜこれほど多くの看護師が辞めたいと言っているのに、業界全体として何も改善されないのだろう」と疑問を感じます。
業務量の削減や人間関係の改善、患者対応の負担軽減といった課題は、どれも長年にわたり放置されてきた問題です。
個人的には、辞めたいと思う9割の看護師たちが一斉に辞めたら、さすがに業界全体が危機感を持つのではと思ってしまいます。
それでも、辞めずに頑張り続ける看護師が多いからこそ、状況が変わらないのかもしれませんね。
看護師として働く全ての人が、少しでも働きやすい環境になることを願いながら、今日もまた現場に立ち続けています。