看護師として働く中で、患者さんやそのご家族から理不尽な暴力やハラスメントを受けた経験はありませんか?
「殴られたのに、それがただのインシデントで処理されて終わった」「ケガを負ったのに『あなたの対応が悪かったのでは?』と上司に責められた」「セクハラを受けても病院側は何もしてくれない」――こうしたことが日常茶飯事だという方もいるでしょう。
看護師は患者さんに寄り添い、命を守る仕事をしています。
しかし、その看護師自身が守られていない現実があります。
暴力を受けたとき、なぜそれが「犯罪」として認められないのか?
どうして看護師は我慢するしかないのか?
今回は、この理不尽な状況を掘り下げ、看護師が置かれている現実を共有しながら、「どうすれば自分たちを守れるのか?」を一緒に考えてみたいと思います。
看護師への暴力の現状を見つめ直しませんか?
まずは、現場で私たちが直面している暴力の実態を振り返りましょう。
暴力がどれほど頻繁に発生しているか、そしてそれがどのように扱われているのかを理解することが大切です。
身体的暴力の頻発
「夜勤中に高齢患者のオムツ交換をしている最中に、突然顔を蹴られた」という話を聞いたことはありませんか?
私の知人の看護師も同じような経験をしています。
その患者さんは認知症を患っており、自分の行動をコントロールできない状態でした。
師長に報告したものの、その後の対応は「とりあえず報告書を出しておいてね」で終わり。
怪我の補償もなく、患者への対応策も取られず、看護師本人が痛みを抱えたまま業務を続けるしかありませんでした。
また、精神科病棟では暴力がさらに日常的に起こっています。
ある看護師は患者さんに顔を叩かれ、眼鏡が壊れたそうです。
「スペアがなくて困ったから、次から2つ眼鏡を作るようにしました」と笑い話のように話してくれましたが、その裏には「どうしようもない」と諦めざるを得ない現実があります。
言葉の暴力やセクハラの常態化
身体的な暴力だけでなく、侮辱的な言葉やセクハラも私たちを苦しめています。
「看護師なんて誰でもできる仕事だろ」「女なんだから笑顔で接しろよ」といった暴言や、身体に触れてくるセクハラ患者は決して少なくありません。
これに対して、病院側の対応はどうでしょうか?
ほとんどの場合、「その患者さんは要注意だから」と記録するだけで、具体的な対策は取られません。
なぜ私たち看護師は守られないのか?
暴力が犯罪として扱われない背景には、いくつかの要因があります。
責任能力が問われない法律の壁
看護師への暴力が起きる場面では、多くの場合、患者が認知症や精神疾患を抱えているケースが多いです。
このような患者さんは法律上「責任能力がない」とみなされるため、刑事責任を追及することが非常に難しくなります。
たとえ傷害罪や暴行罪に該当する行為であっても、患者自身がその行為を理解していないと判断されると、事件として立件するのは困難です。
病院側の「問題を隠す」姿勢
看護師が暴力を受けても、病院側が「問題を大きくしたくない」という理由で対応を先延ばしにすることが少なくありません。
暴力が発生しても、「病院の評判が落ちるのは困る」「患者家族との関係を悪化させたくない」といった理由で、暴力が見過ごされるのです。
その結果、看護師が怪我をしても、インシデントレポートとして報告されるだけで、適切な補償や対策が取られることは稀です。
看護師への偏見と職業文化
「看護師は患者に寄り添うのが仕事」という偏見が、私たちをさらに追い詰めます。
「患者の暴力は仕方がない」「暴力を受けたのはあなたの対応が悪かったのでは?」といった言葉を受けたことがある方もいるでしょう。
被害者であるはずの看護師が、逆に責任を問われる理不尽な状況に置かれることも少なくありません。
看護師として、どうこの現実に向き合うべきか?
私たち看護師は、この現実にどう立ち向かえばよいのでしょうか?
理不尽な暴力を受けても泣き寝入りするのではなく、自分たちを守るための行動を考えてみましょう。
危険を予測し、自己防衛を優先する
患者さんの状態や反応を観察し、「危険だ」と感じたときには無理に対応しないことが大切です。
危険を予感したら、周囲のスタッフに助けを求めたり、男性スタッフを同行させるなどの工夫をしましょう。
特に暴力が予見される状況では、自分を守るために患者さんとの距離を適切に取ることも必要です。
問題を記録し、報告する
暴力やハラスメントを受けた場合には、必ず上司に報告し、記録を残しましょう。
「報告しても意味がない」と感じるかもしれませんが、これが問題を共有し、解決への第一歩となります。
また、記録が積み重なることで、病院が問題に向き合わざるを得なくなる可能性もあります。
看護協会や外部機関に相談する
看護師のための相談窓口や団体を活用することも解決の糸口です。
看護協会などに現状を訴えることで、社会問題として注目される可能性があります。
また、弁護士や労働組合に相談することで、自分自身を守るための法的手段を模索することもできます。
看護師の皆さんに問いかけたい
看護師として、暴力を受けた経験がある方、そのときにどう感じましたか?
「なぜ私は守られないのか」「なぜこれが当たり前のように扱われるのか」と感じたことはありませんか?
私たちが声を上げなければ、こうした現実は変わりません。あなたの現場では、暴力やハラスメントに対して適切な対応が取られていますか?
まとめ
私たち看護師は、患者さんに寄り添い、命を守るために働いています。
しかし、その私たちが理不尽な暴力にさらされ、それを「仕方がない」として受け入れるしかない状況が続いています。
この現実を変えるためには、看護師一人ひとりが声を上げることが大切です。
「看護師だから暴力を受けても仕方がない」という風潮を変えるために、私たちは何をすべきでしょうか?
自分たちを守る行動を取りつつ、社会全体にこの問題を訴えかけていく必要があります。
一緒に考え、行動していきましょう。