国内でも多くの方に認知されているであろう職種の「看護師」。
皆さんの周りや知り合いにも看護師として働いている方はいるのではないでしょうか?
毎年3~4万人の看護学生が国家試験を合格し、看護師免許を取得しています。
数だけ聞くと、かなり多くの看護師が誕生していることが分かりますね。
しかし現在、看護師として働いている人はその数に比例しておらず、マンパワーが不足している状況です。
実際に病棟で働いていた時に、何度人手不足を痛感したことか…。
そんな看護業界で「2025年になると看護師が飽和状態で余る」という衝撃の試算が発表されました。
にわかには信じがたい話です。
そこで本記事では、どうしてそのような試算が発表されたのか、その理由、そして看護師の将来についてご紹介していきたいと思います。
将来看護師が飽和状態になると予想される理由とは
看護師が将来、飽和状態になるとされている要因には以下の2つが挙げられます。
(1)潜在看護師の存在
(2)診療報酬改定による医療業界の見直し
どちらも医療業界にとって重要な課題となっていますので、それぞれ細かく見ていきましょう。
潜在看護師の存在
現在の日本にどれだけの潜在看護師がいるか、ご存知でしょうか?
平成26年と少し前のデータになりますが、厚生労働省が発表した『看護職員の現状と推移』によると、潜在看護師の数は約71万人となっています。
参考 厚生労働省 看護職員の現状と推移より
全体の看護職員の数が約154万人ですから、おおよそ半分もの看護師が資格は持っているものの、看護師として勤務してません。
今後の日本の人口は減少傾向になっていくと考えられており、これらの潜在看護師が再就職した場合は一気に現在の1.5倍にまで看護師の数は増えます。
こういった背景から「将来的に看護師は余るのではないか」という話が出てきたのです。
診療報酬改定による医療業界の見直し
2年ごとに診療報酬が改定されるというのは看護師の皆さんには広く知られていることでしょう。
そもそも看護師が余るという試算が出たのは、2014年に発表された厚生労働省の「平成26年度診療報酬改定」によるものでした。
この改定により、2025年には第一次ベビーブーム時に出生した団塊の世代たちが後期高齢者になるということで、医療費などの増大や医療業界のマンパワー不足について本格的な検討がなされました。
その結果、在宅医療の拡充や、病院・病床の再編成といったこれまでの医療体制の根本を見直すこととなったのです。
そして「診療報酬改定によって決まった方針を確実に実行した場合、医療体制が変革し将来的に看護師の数が14万人余る事態となる」という試算が発表されたのです。
参考 平成26年度診療報酬改定の概要より
具体的には後期高齢者は急性期疾患よりも慢性期疾患で診る場合が多いため、急性期病棟を再編し、慢性期病棟・回復期病棟を増やしていくというものです。
慢性期病棟や回復期病棟の場合、看護師は7:1看護ではなく10:1看護になるところもあるため、看護師をそれほど必要とせず、結果的に「余る」、「飽和状態」になると考えられたのでした。
本当に看護師は余る?現場の声は?
前章で看護師は飽和状態になると考えられる2つの要因についてお伝えしました。
(1)潜在看護師の存在
(2)診療報酬改定による医療業界の見直し
これらは全てデータを基に算出されたもので、実際の現場を見て出されたものではありません。
実際に働いている皆さんは、看護師が余るというビジョンは湧かないのではないでしょうか?
それも当たり前です。
現時点において、出された試算通り看護師が余るということはなく、ズバリ「数万人~数十万人単位で足りないだろう」というのが現状だからです。
ではなぜ足りないのでしょうか?
すでにお伝えした通り、日本には潜在看護師が現職で働かれている看護師の半数程度います。
加えて毎年新卒で看護師になっていく人と同じくらい、毎年潜在看護師になる方も増えているのです。
現職で働かれている看護師だって年数を重ねると、時期に定年退職や産休・育休などのライフイベントで休職する時期が来るでしょう。
私自身、当時新卒で入社した病院は4月時点で100人の同期がいたのにも関わらず、年度末になると50人にまで減っていました。
看護師はその仕事の特殊性や人間関係の複雑さ、過酷な勤務スタイルなどから離職率が高いことでも非常に有名です。
そのため今後も潜在看護師の人数は増え続け、そして現場で働く看護師は不足するという見方ができるのです。
特に「病院ではなく在宅での治療へ」という方針があるため、病棟は縮小し、今後は訪問看護や介護施設などで働く看護師が求められるようになるでしょう。
病棟は縮小傾向にあるため、看護師の人員を増やすという選択はされないでしょうし、残念なことに訪問看護でも介護施設でも、看護師は足りていない状況です。
そのため、少なくともここ数年の間に看護師が飽和状態になるということは考えにくいでしょう。
在宅医療における看護師が活躍できる場とは?
現在の医療は「病院ではなく在宅での治療へ」という方針のため、今後は病院ではなく在宅方面での看護師の需要が多くなると考えられています。
例えば在宅での看護師の働く場として一番にあげられるのが「訪問看護」です。
訪問看護とは疾患や障害などを持った方が、在宅や地域で自分らしく生活できるように支援するサービスです。
地域にある訪問看護ステーションから、看護師や理学療法士、作業療法士、薬剤師などが訪問し、看護・医療ケアを提供しています。
全国訪問看護事業協会の「令和2年訪問看護ステーション数調査結果」によると、日本国内にある訪問看護ステーションの数は11,161カ所にものぼり、開設される訪問看護ステーションは年々増加しています。
参考 全国訪問看護事業協会 令和2年度 訪問看護ステーション数調査結果より
最初の頃に比べ、訪問看護の提供する看護の領域は増え続けたこともあって、訪問看護で働く看護師は増加傾向です。
しかしながら都道府県それぞれのナースセンターや看護協会の方でも、積極的に在宅医療での看護師の復職支援を行なってはいるものの、現状職員の数が足りない状況が続いています。
他にも介護施設などで働く看護師が増えてはいますが、需要分にまでは達していません。
今後病院から転職を考えたときには、在宅看護での働き方を検討してもいいかもしれませんね。
将来を見据えた看護師の働き方とは
少なくともここ数年以内に看護師が飽和状態にならないことはご説明しました。
しかしそれはあくまで「ここ数年」の話です。
20年後、30年後はどうなっているのか誰にも分かりません。
その中で看護師として働き続けるためには、新しい働き方を考える必要があります。
「新しい働き方」というと、少し難しく感じてしまうかもしれませんが、そんなにハードルの高いものではありません。
看護師がこの先も看護師として働き続けるために、他の看護師との違いやオリジナリティーがあると良いでしょう。
そこでぜひ「看護師×○○」を意識するようにしてみてください。
例えば趣味でアロマテラピーをしている看護師がいたとします。
そうしたら「看護師×アロマテラピー」のように掛け合わせることで、香りの側面から普段の看護に活かせるかもしれません。
他にも例を出すと、プログラミングができる看護師がいたとしましょう。
昨今のIT社会の影響もあって、医療も対面式からオンラインでやり取りできるようなシステムが流通し始めています。
「看護師×プログラミング」のようにプログラミングやネットワーク構築に強い医療従事者は非常に重宝されるでしょう。
もしかした医療ITの分野で、看護師としてではないポジションでの働き方もできるかもしれません。
このようにただの「看護師」ではなく、「看護師×○○」となることで、オリジナリティが生まれ、その人だけが持つ強みにつながっていくのです。
まとめ
看護師の将来についてお話していきました。
飽和状態になる!バブル到来!等言う人もいるようですが、現状は逆であって看護師は不足していくと思います。
看護師にとってはつらい日々が続く可能性もありますが、ぜひ自分にしかない強みを見つけて、それを磨いていってくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。