看護師という職業は、多くの人々の命や健康を支える崇高な仕事です。
しかし、現場で働く看護師たちの声を聞くと、時代遅れの風潮が未だに根強く残っていると感じざるを得ません。
「昭和の働き方」が未だに看護業界を支配していると嘆く声は多く、現代の労働環境や価値観とのギャップが問題視されています。
今回は、看護師が直面する現状と、それを改善するための視点について考えてみたいと思います。
現場に残る「昭和の働き方」
看護師として働いていると、現場には「昭和の働き方」の名残が多く見受けられることがあります。
例えば、上下関係を絶対視する文化や、細かい規律への執着が挙げられます。
髪の色やマツエク、靴下の色など、業務に直接影響しない部分まで指摘されることも少なくありません。
また、患者さんへの対応が中心となる職業でありながら、看護師自身の個性や働きやすさは後回しにされる傾向があります。
「患者さんには個別性を尊重して」と教えられる一方で、自分たちはその個別性を抑え込まれ、誰もが同じ型に収まることを求められる。
そんな矛盾に息苦しさを感じることもあります。
給与や待遇の不公平感が生む不満
時代が進む中で、他の職種では給与や待遇が改善され、働きやすさが向上しています。
一方で看護師の給料は、業務量や責任の重さに見合わないと感じる人が多いのが現状。
一般企業では成果に応じた報酬やインセンティブが導入される一方で、看護業界では保険点数による収益構造が固定されているため、給与アップの余地がほとんどありません。
また、患者さんやその家族からのクレーム対応、過重労働、人員不足など、業務負担が年々増加しているにも関わらず、その労力が適切に評価されていないと感じることが不満を生む大きな要因となっています。
結果として、「何のために看護師をしているのかわからなくなる」と感じる人も少なくありません。
教育現場も「昭和」から抜け出せていない
看護師になるための教育現場もまた、「昭和的」であるという声が上がっています。
実習では精神的にも肉体的にも厳しい環境が未だに残されており、それが学生に過度なプレッシャーを与えています。
「実習を乗り越えられないなら現場では通用しない」といった考え方が根深く、それが看護師不足を招く原因の一つにもなっています。
リハビリ分野の教育では、学生の心のケアや柔軟な指導が取り入れられるようになり、教育が進化している例も見られます。
しかし、看護分野ではそのような改革が遅れており、結果として学生が離れていくことにつながっています。
自己犠牲を求める「奉仕の精神」の限界
看護師という仕事には、「奉仕の精神」が求められることが多いですが、その名の下で自己犠牲が当たり前とされている風潮があります。
例えば、休憩時間を削って患者さんの対応をしたり、勤務時間外でも呼び出しがかかったりすることが珍しくありません。
それを「プロ意識」として美化する文化が、現場で働く人たちに負担を強いる結果になっています。
現代では、「自分の幸せ」を追求することが一般的な価値観となっています。
他の職種では、仕事とプライベートのバランスを保つための制度が整えられていますが、看護業界ではまだまだ遅れを取っています。
これでは、若い世代が看護師という職業に魅力を感じにくくなるのも無理はありません。
クレーム対応や過剰な責任感が生む疲弊
看護師の仕事には、患者さんだけでなく、その家族への対応も含まれます。
近年では、患者や家族の権利意識が高まり、それがクレームの増加につながっています。
看護師がどれだけ尽力しても、理不尽な要求や批判を受けることがあり、それが職場でのストレス要因になっています。
また、医療ミスが許されないというプレッシャーが、看護師に過剰な責任感を生む一因ともなっています。
これらの要因が積み重なり、「もう辞めたい」と感じる看護師が増えている現状があります。
上層部の「昭和的な考え方」が改革を阻む
看護業界全体が変わらない理由の一つに、上層部の「昭和的な考え方」が挙げられます。
上司が過去に苦労した経験を前提に、「自分たちもこれを乗り越えてきたのだから、部下も当然同じように乗り越えるべきだ」という考え方を持つケースが多いのです。
さらに、閉鎖的な職場環境が改革を難しくしていることも課題。
医療業界の内部で完結するルールや価値観が多く、外部の新しい考え方が取り入れられにくい状況が続いています。
その結果、看護師たちが働きにくい環境が維持されてしまっています。
時代に合った働き方を模索する必要性
これからの看護業界には、時代に合った働き方を取り入れることが求められます。
例えば、柔軟なシフト制度や、職員のメンタルヘルスをサポートする仕組みを導入することで、働きやすさを向上させることができます。
また、キャリアアップや専門性の向上を支援する制度を整えることも重要です。
看護師が成長を実感し、やりがいを感じられる職場環境を作ることで、離職率の低下につなげることができます。
まとめ
看護師という職業がこれからも持続可能であるためには、大胆な改革が必要です。
現場の声を反映させた制度設計や、上層部の意識改革が欠かせません。
また、看護師自身も、自分たちの働き方を見直し、意見を発信していく姿勢が求められます。
医療業界は確かに特殊な分野ですが、それが時代遅れの働き方を続ける理由にはなりません。
看護師一人ひとりが声を上げ、業界全体で変革に取り組むことで、現場が抱える問題を解決する糸口が見つかるはずです。
