看護師として働いていると、年々キーパーソンがいない患者さんが増えていることを実感しませんか？
結論から言えば、現在の医療制度ではキーパーソンがいなくても診察や入院は可能ですが、その対応には大きな困難が伴います。
今後さらに高齢化や単身世帯の増加が進めば、病院側の負担はさらに増し、いずれキーパーソン不在の患者さんの受け入れが難しくなる可能性もあります。
特に看護師として現場にいると、キーパーソンが不在の患者さんに関する問題に直面する機会は多いですよね。
救急搬送されてきたものの、身寄りがおらず同意を取る家族がいない。保証人がいないため、入院費の支払い能力が不透明。
退院後の受け入れ先がなく、病院に長期間留まるしかない。
こうした問題は、もはや一部の特殊なケースではなく、医療現場全体で頻発する問題となっています。
それにも関わらず、病院は医療を提供する場であり、本来であれば患者さんの生活面の問題まで抱え込むべきではないはずです。
しかし、現実にはキーパーソンがいないことで、治療以外の問題が山積し、看護師をはじめとする医療スタッフの負担が増加しています。
患者さんのケアだけでなく、行政との調整、施設探し、保証人不在の対応など、本来であれば社会福祉機関が担うべき業務まで医療現場が請け負わざるを得ない状況です。
キーパーソンがいない患者さんをどう受け入れるのか。
今後の医療制度がどう変わるべきなのか。
これからますます増えるこの問題について、看護師としての視点から考えていきましょう。
キーパーソンとは何か？なぜ必要なのか？
まず、「キーパーソン」とは何かを整理しましょう。
医療の現場において、キーパーソンとは患者さんの意思決定をサポートする家族や親族、あるいは保証人のことを指します。
患者さんが意識を失った場合や判断能力が低下した場合、手術や治療の同意を求める際に重要な役割を果たします。
また、入院の際には保証人として、費用の支払いや退院後の受け入れ先の確保など、医療以外の手続きでも必要となることが多いです。
しかし、近年の高齢化や核家族化の進行、未婚率の上昇などの社会的変化により、キーパーソンがいない患者さんが急増しています。
特に独居の高齢者や身寄りのない方、家族と絶縁している患者さんが増えているため、病院側もどのように対応すべきか頭を悩ませているのが現状です。
キーパーソンがいないと、医療機関は治療の決定や入院手続きを進めることが難しくなります。
例えば、救急搬送された患者さんが意識不明で、キーパーソンが不在の場合、誰が治療の同意をするのかという問題が発生します。
通常であれば家族や保証人が対応する場面でも、キーパーソンがいないことで手続きが遅れ、場合によっては治療の開始が遅れてしまうこともあります。
また、入院手続きの際も保証人がいないことで病院側が費用の回収リスクを負うことになり、経営的な観点からも問題となります。
特に私立病院や経営の厳しい病院では、保証人不在の患者さんの受け入れを制限するケースも増えており、今後この傾向がさらに強まる可能性も考えられます。
キーパーソンがいない患者さんの入院の難しさ
看護師として働いていると、キーパーソンがいない患者さんの入院手続きがいかに複雑であるかを実感することが多いですよね。
そもそも、病院は「治療を提供する場」であり、「生活支援をする場」ではありません。
しかし、キーパーソンがいないことで、治療以外の問題が山積し、病院側がその対応に追われるケースが増えています。
たとえば、独居高齢者が入院した場合、退院後の生活の調整が必要になります。
しかし、キーパーソンがいないため、病院側が地域包括支援センターやケアマネージャーと連携し、施設入所の手続きを進める必要が出てきます。
これは本来、行政が担うべき役割ですが、実際には病院が負担することが多く、看護師の業務量が増加する要因にもなっています。
また、身寄りのない患者さんの中には、認知症や精神疾患を抱えている方も多く、治療の同意が取れないケースもあります。
本来であれば成年後見制度を利用するのが理想ですが、制度の利用には時間がかかるため、緊急時の対応が難しいのが現状です。
そのため、病院側としては「誰も責任を持たない患者さん」を抱え込むことになり、退院の調整がスムーズに進まないことが問題となります。
キーパーソン不在がもたらす医療現場の混乱
キーパーソンがいない患者さんが増えることで、医療現場の負担は増大しています。
診察や治療、入院手続きがスムーズに進まないだけでなく、退院後の調整が困難になり、病院側がその対応に追われることになります。
また、身寄りがいない患者さんの中には、問題行動を起こす方も少なくありません。
家族の監視がないため、医療スタッフに対する暴言や暴力行為が増えることもあります。
さらに、保証人不在の患者さんは費用未払いのリスクも高く、病院経営にも悪影響を及ぼすことがあります。
現状では、地域包括支援センターや行政と連携して対応することが一般的ですが、それでもすべてのケースに対応できるわけではありません。
今後、キーパーソンがいない患者さんがさらに増えれば、病院の負担は限界を迎える可能性があります。
まとめ
キーパーソンがいない患者さんの増加は、今後の医療現場にとって避けられない課題です。
診察や入院が可能であるとはいえ、病院側の負担は増加し続けており、いずれ受け入れの制限が設けられる可能性もあります。
看護師として日々働いていると、キーパーソン不在の患者さんに関する問題に直面する機会が増えており、治療以外の業務に追われる現状に疲弊しているスタッフも少なくありません。
本来、この問題は行政が中心となって解決すべきものですが、現状では病院側への負担が大きくなりすぎています。
今後、医療と福祉の連携を強化し、病院が過剰な負担を負わなくても済むような仕組みを整えることが求められています。
