ナースコールは、患者さんが何かを求めたり緊急事態を伝えるための重要な手段です。
そのため、看護師にとってナースコールへの対応は、患者さんとの信頼関係を構築する基盤となる行為です。
しかし、ナースコールに対して「どうされましたか?」と尋ねるのは現場では推奨されないケースが多いのが現状です。
この理由には、患者さんのプライバシーや現場の効率性を考慮した医療現場の特殊性があります。
看護師として患者さんに寄り添い、最適な対応を提供するためには、正しいナースコール対応の在り方を理解することが重要です。
本記事では、私自身の経験を交えながら、「どうされましたか?」が避けられる理由と、実際の現場での適切な対応について詳しく解説します。
「どうされましたか?」が適切でない理由
ナースコールで用件を尋ねる行為が避けられる最大の理由は、患者さんのプライバシー保護にあります。
特に多床室では、他の患者さんや見舞い客がいる可能性が高く、個人的な要望を大声で話すのは患者さんにとって心理的負担となることが少なくありません。
例えば「トイレに行きたい」「おむつを交換してほしい」など、プライベートな内容が含まれる要望を共有スペースで口にするのは気が引けるものでしょう。
看護師として患者さんの気持ちを尊重するためにも、ナースコール越しに用件を聞き取るのではなく、直接患者さんの元へ行き、静かな環境で対応することが重要です。
また、ナースコールの音声は機械的で聞き取りづらい場合が多く、高齢の患者さんや聴覚障害を持つ方にとっては、用件を正確に伝えるのが難しいことがあります。
私自身、何度もナースコール越しに要件が分からず、結局訪室してから再確認することになった経験があります。
このような場合、初めから現場に赴く方が時間も効率も節約できますし、患者さんの不安を早期に解消することが可能です。
特に高齢者の場合、そもそも耳が遠く、何度も説明し直さなければならない場面もあるため、直接対面で話を聞く方がスムーズに進むのです。
さらに、ナースコール対応では緊急性を要するケースも多々あります。
センサーマットが作動したり、ベッド柵の転倒音が聞こえたりした場合、内容を確認している時間がないこともあります。
このような場面では、詳細を尋ねるよりも「伺います」と応答して迅速に現場に急行することが重要です。
この対応により、患者さんがすぐにケアを受けられるという安心感を得られるだけでなく、看護師としての判断力や行動力も試される場面となります。
適切なナースコール応答:「伺います」と一言で伝える大切さ
では、ナースコールにどう応答するのが適切なのでしょうか。
多くの現場で推奨されているのが、用件を詳しく尋ねるのではなく、簡潔に「伺います」と伝える方法です。
この応答は短くてわかりやすく、患者さんに「すぐ来てもらえる」という安心感を与える効果があります。
また、内容を聞き取るためのやり取りに時間を割かずに済むため、現場での負担を軽減することができます。
私の職場では、「伺いまーす」という一言を基本としてナースコール対応が行われています。
この方法は、患者さんのプライバシーを守りつつ、迅速な対応が可能になるだけでなく、患者さんのニーズを直接確認できるという点でも非常に有効です。
現場に向かうことで、患者さんが抱える問題をその場で解決でき、必要に応じて優先順位を再調整することも可能です。
ただし、全てのケースで即座に訪室できるわけではありません。
他の患者さんの対応中で手が離せない場合もあります。その際には「5分ほどお待ちいただけますか?」と、具体的な待ち時間を伝えるようにしています。
このように時間の見通しを伝えることは、患者さんに対する誠実な対応の一環であり、患者さんが「放置されている」と感じることを防ぐ効果があります。
現場での経験と課題:迅速な対応が求められる緊急時
ナースコール対応の中には、瞬時に対応しなければならない緊急事態もあります。
例えば、センサーマットが作動した場合や転倒のリスクがある状況では、「ビーチフラッグ」の競技さながらに現場に全力で駆けつける必要があります。
このような対応は、看護師としての行動力と判断力が問われる瞬間でもあります。
一方で、急ぎすぎることで自身が怪我をしてしまうリスクもあります。
私自身、過去に転倒音を聞いて急行した際、足を挫いてしまった経験があります。
この経験を通じて学んだのは、迅速な対応だけでなく冷静さも同時に求められるということです。
どれだけ状況が切迫していても、自分の安全を確保しながら行動することが、長期的に見て患者さんへのケアを継続的に提供するために欠かせないと実感しました。
チームでの連携と効率的な対応体制
ナースコール対応を円滑に行うためには、看護師同士の連携が不可欠です。
私が以前働いていた病棟では、スタッフがチームごとにエリアを分担し、ナースコールへの迅速な対応を実現していました。
この分担制により、担当エリアの患者さんに集中してケアを提供でき、全体的な効率が向上しています。
また、ナースコールの頻度が高い時間帯には、スタッフの配置を増やしたり、病室近くにスタッフが常駐する体制をとることで、さらなる迅速化を図っています。
このような工夫により、患者さんは迅速な対応を受けることができ、スタッフの負担も分散されるため、業務全体の質が向上します。
効率的な連携が取れる職場環境では、看護師一人ひとりの負担が軽減されるだけでなく、患者さんの満足度向上にもつながります。
まとめ
ナースコール対応は、看護師にとって単なる日常業務ではなく、患者さんとの信頼関係を築く重要な場面です。
「どうされましたか?」という一見丁寧な応答が、患者さんにとって心理的負担や効率面で問題を引き起こす場合があることを理解し、「伺います」というシンプルで適切な対応を心がけることが求められます。
患者さんのプライバシーや個別性に配慮しながら、柔軟かつ迅速に対応することで、患者さんの安心感を高めるだけでなく、現場全体の効率化も図ることができます。
また、現場の課題に直面しつつ改善を続けていくことで、患者さんにとっても看護師にとってもより良いナースコール対応を実現することが可能です。
これからも現場での経験を積み重ね、より良いケアを提供するために努力を続けたいと思います。