看護師を目指している人は必ず看護学校へ通います。
その中で勉強や実習など並大抵ではできないくらいの大変さを知るでしょう。
しかし、看護師を目指す人の中には「これ!」という、まさに気が引き締まると共に士気を高める大きな行事があります。
それが「戴帽式(ナーシングセレモニー)」です。
戴帽式は必ず看護学校では執り行われており、やったことがないという看護師はいないくらいかなり古い歴史を刻みつつ日本全国の看護学校は実施を続けています。
そんな戴帽式も長年の中で変わりつつあります。
今回は戴帽式がどのように変わったのか、また元々戴帽式とはどういうものなのか、体験談も交えつつ紹介していきましょう。
最近の戴帽式(ナーシングセレモニー)は?
戴帽式は上記でも記載したように昔から看護師を目指す学生に行われる大変重要な行事になります。
現在ではナースキャップ廃止により呼び名も戴帽式から「ナーシングセレモニー」というのが一般的になりました
これに関しては看護学校へ入学して初めて知る行事となりますが、多くの看護学生は、この戴帽式を経てより一層看護師としての志を強め、真摯に向き合う準備となるでしょう。
私は看護学校へ入学した際にこの「戴帽式」という行事があることを初めて知りました。
そこで、戴帽式を知らないという看護学生の方に向けて戴帽式とは何か、また現在の戴帽式の様子について解説していきます。
戴帽式とは
戴帽式の読み方は「たいぼうしき」と言います。
あまり見慣れない漢字でもあるので、読み方が分からない人というのも多いのではないでしょうか。
戴帽式とは、何度かお伝えしたように看護師を目指すために入学した看護学校にて行われる一つの行事であり、初めて実習に挑む前に教員が学生に対して
「人々の健康のために誠実で清い看護を行うことを誓い、改めて看護への意識を高める」
ために行われます。
看護師間でナースキャップが使われていた時代では、ナースキャップを頭に付け、看護師としての一歩を踏み出す一つの儀式のような形でした。
学生はナースキャップをつけてもらった後に、ナイチンゲール像からろうそくに火を灯し、暗い中ろうそくの光のみで看護学生が並びます。
そして誓いの一つとして「ナイチンゲール誓詞」を唱えるというものです。
現在はナーシングセレモニーが主流
看護師を目指している人ならばわかると思いますが、現在看護師が勤める病院やクリニックを見ても看護師がナースキャップをしているというのはあまり見なくなりました。
その理由として、ナースキャップをつけて仕事をすることは、院内感染のリスクが上がるということや不潔だという理由により廃止され、それは戴帽式でも同様不必要なものとなりました。
現在は戴帽式ではなく、セレモニーと称して行うようになったため「ナーシングセレモニー」と名前が変わったり、他にも「戴灯式」(たいとうしき)や「宣誓式」(せんせいしき)など様々な呼び方に変わっています
ナイチンゲール誓詞とは
フローレンス・ナイチンゲールは有名でしょう。
イギリスの看護婦として生涯を尽くした人であり、「看護師=白衣の天使」という印象を与えた看護業界でも母と呼ばれる程大きな存在です。
そんなナイチンゲールの偉業を称えて1893年にアメリカ・デトロイトの看護婦学校長夫人を委員長とした人達で作られたものが「ナイチンゲール誓詞」になります。
われはここに集いたる人々の前に厳かに神に使わん
わが生涯を清く過ごし、わが任務を忠実に尽くさんことを。
われはすべて毒あるもの、害あるものを断ち
悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれをすすめざるべし。
われがわが力の限りわが任務の標準を高くせんことを努むべし。
わが任務にあたりて、取り扱える人々の私事のすべて
わが知り得たる一家の内事のすべて、われは人に洩らさざるべし。
われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸せのために身を捧げん。
というものです。
ナイチンゲール誓詞を見てもらうと分かる通り、看護師とはどうあるべきなのか、何をもって看護を行うべきなのか、全てにおいて記してあります。
戴帽式では、これを頭に入れ看護学生全員で声を揃えて唱えることを必要としています。
戴帽式のメッセージカード
戴帽式を含め、ナーシングセレモニーではメッセージカードが多く寄せられます。
卒業式で先生からの一言や先輩からの一言、教育委員会や市長などから「祝辞」と称して読まれていた経験はないでしょうか
戴帽式でも同様にメッセージカードが毎年贈られてきており、戴帽式の最中に祝辞として読まれることが多くあります。
この戴帽式でのメッセージカードとは実際、入学式・卒業式とどのような違いがあるのでしょうか。
メッセージカードの意味やどのような人から贈られてくることが多いのか紹介していきましょう。
メッセージカードの内容は?
戴帽式で贈られるメッセージカードの中には、最初に戴帽式を迎えられたことに対しての祝いの言葉が添えられます。
簡単な内容の場合には「戴帽式おめでとうございます。」と一言二言添えられているものもありますが、思いを綴っているカードには、戴帽式に対しての祝辞はもちろん、これから始まるであろう実習についてや、看護師を目指す上でどういう点に気を付けなくてはいけないのかなどもあります。
また、メッセージをくれる中で最も重要なのは上級生である先輩からの言葉です。
戴帽式へ対しての激励と、下級生がこれから挑む実習やテストについて記載してありますが、学生同士だからこそ分かる辛い時の立ち向かい方について沿えてくれることもあります。
戴帽式というのは、これから看護師を目指すためへの第一歩をようやく踏み出したようなものであり、戴帽式を迎える生徒は緊張するでしょう。
しかし、その緊張を少しでも和らげようとメッセージカードには多くの言葉が記載してあるので、聞く機会があれば、じっくり意味を考えて聞いてみてください。
先輩や先生など様々
では、メッセージカードをくれる人はどのような人なのでしょうか。
上記でもお伝えしたように、上級生代表の人がまずメッセージをくれます。
他にも、先生や実習先の看護師長がくれることもあるでしょう。
珍しくありますが、卒業生である看護師が戴帽式にメッセージをくれることも。
私が戴帽式をした際には実習先の病院全ての師長がメッセージカードをくれました
他にも、これはあまりありませんが、以前通っていた学校の担任の先生がメッセージカードで戴帽式を祝ってくれたりもしました。
このように、決まった人しか贈ることができないわけではなく、祝いたいという気持ちがあるならば、誰が送っても問題はありません。
あまりに多いと戴帽式で全て読まれることはありませんが、戴帽式終了後にメッセージカードを飾ってくれることもあるので、読んでみてください。
戴帽式がどんどん廃止に?
看護師と言えば「ナースキャップ」というイメージが強くあります。
イメージが強いというだけあり、長年看護師は白衣にナースキャップというのが制服であり、看護師もナースキャップをつけて気を引き締めていたと言ってもよいでしょう。
しかし、医療技術の発展に伴い、医療における環境の見直しや安全性を問われ、看護師の制服に限らず様々な部分で変わってきています。
そして、ナースキャップ廃止もその一つでした。
ナースキャップを廃止した目的として、感染予防やナースキャップがあることで患者にぶつかる危険性があるためとのこと
ナースキャップがあることで起きる危険性に伴い、廃止を決め実際にほとんどの医療機関で現在はナースキャップを使用していません。
それに伴い、戴帽式でもナースキャップの廃止に沿い、また戴帽ではないという理由で名前も変えられてしまい、現在「戴帽式」というものは廃止されつつありますが、実際には名前を変えてセレモニーの一つとして実施されています。
私の戴帽式の感想
私が戴帽式をした時はまだ廃止されてすぐの頃でした。
そのため、戴帽式という名前は変わらず、また戴帽式ではナースキャップを頂いたことを覚えています。
戴帽式に向けて並び順や流れについて何度も練習を行い、本番を迎えました。
本番はとても緊張しましたが、戴帽式を迎えられたことは大変嬉しかったです。
そして、戴帽式にて学生全員で唱えた「ナイチンゲール誓詞」は覚えることが大変でしたが、改めて看護師を目指す上でどのような心がけを必要とするのか身に沁みました。
先生からつけてもらったナースキャップは特別なものとして今でも大切に保管をしています
まとめ
戴帽式は看護学生として過ごしていく中で、一番大きな喜びと緊張感を得られる行事の一つとなり、それは看護師になっても強く残るでしょう。
ナースキャップをもらえることが看護師を目指していく中で一つの夢としている人もいますが、今ではナースキャップの廃止に伴い、戴帽式ではもらえなくなりつつあります。
少し残念なような気持ちはありますが、看護師を目指す中でナースキャップが全てでもありません。
戴帽式やナーシングセレモニーなどを得て、これから新たな一歩を踏み出し、自分なりの看護師を目指してください。