患者さんへの敬語は必要ですが、過剰な敬語やへりくだった態度は不要です。
看護師として大切なのは、患者さんとの適切な距離感を保ちながら、誠実に対応することです。
私たちは専門職としてケアを提供しているのであり、「召使い」ではありません。
相手に安心感を与えるために敬語を使うのはいいですが、必要以上に謙ると患者さんに誤解を与えることもあるため、適度な対応を心がけるべきです。
敬語を使うのは当然だけど、過剰に丁寧な必要はあるの?
看護師として患者さんに敬語を使うのは、当然のことです。
それは、患者さんとの信頼関係を築くための基本的なマナーであり、誠意を伝える手段でもあります。
「〇〇しますね」「〇〇していただけますか?」など、丁寧な言葉遣いで説明することで、患者さんは安心感を得ることができます。
ただし、だからといって「〇〇させていただきます」「〇〇してもよろしいでしょうか?」といった、必要以上にへりくだった表現を使うのが本当に必要かというと疑問が残ります。
患者さんの中には、こういった過剰な丁寧さを「自分は特別扱いされて当然」と誤解してしまう人もいます。
たとえば、ある患者さんに「これから点滴をさせていただきます」と説明すると、「やけにへりくだって話してくるけど、看護師として当然の仕事をしてるだけじゃないの?」と思われることもあります。
逆に、「血圧測りますね」とシンプルな言葉で伝える方が、フラットな人間関係を築けることも多いのです。
現場では、適切な敬語を使うことと、過剰な謙りを避けることのバランスが非常に大切です。
患者さんに誠実さを伝えるために敬語を使うのはいいですが、「召使い」として対応しているように見えないように心がけるべきです。
「患者さま化現象」とは?過剰な丁寧さが生む弊害
ここ数年、医療の現場で問題視されているのが「患者さま化現象」です。
患者さんを過剰に敬い、必要以上に「〇〇さま」と呼んだり、極端に謙った態度で接したりすることで、一部の患者さんが「自分は特別な存在だ」と勘違いしてしまう現象を指します。
このような対応を続けると、患者さんが医療スタッフを下に見たり、無理な要求をするようになるケースが増えます。
たとえば、ある外来では、受付スタッフが「〇〇さま」と呼ぶように指導されていました。
結果的に、一部の患者さんが「私はお客様なんだからもっと丁寧に接しなさい」とクレームをつけるようになり、スタッフが対応に疲弊してしまったそうです。
また、病棟では、看護師が「これからお薬を飲ませていただきます」「お体を拭かせていただきます」といった過剰な表現を使うことで、患者さんが「看護師は自分の指示に従う存在」と考えるようになることもあります。
このような関係性が生まれると、看護師の負担が増え、結果としてケアの質が低下するリスクが高まります。
「患者さま化現象」を防ぐためにも、患者さんとの距離感を適切に保ち、必要以上にへりくだらない対応を心がけることが重要です。
「患者さんの態度次第」で対応を変えるのはアリ?
現場では、患者さんによって言葉遣いや態度を変えることがよくあります。
たとえば、フレンドリーで協力的な患者さんには、少し砕けた口調で話すことで、親近感を感じてもらえることがあります。
一方で、横柄な態度を取る患者さんには、あえて丁寧すぎない敬語を使い、毅然とした態度で接することが必要な場合もあります。
たとえば、「〇〇してください」と指示を出すだけで不満を言う患者さんに対して、「〇〇していただけますか?」と過剰にへりくだる必要はありません。
「〇〇しますね」とシンプルに伝えることで、看護師としての専門性を示しつつ、対等な関係を築くことができます。
患者さんの態度次第で対応を変えることは、患者さんとの関係を円滑にするために必要なスキルです。
ただし、どんな態度の患者さんにも一貫して敬意を持った言葉遣いを心がけることが重要です。
敬意とへりくだりは違うものだと理解し、自分が「召使い」ではないという意識を持つことが大切です。
敬語を使うことのメリットとデメリット
敬語を使うことには多くのメリットがありますが、場合によってはデメリットも生じることがあります。
ここでは、それぞれの側面を具体的に見ていきましょう。
敬語を使うメリット
- 患者さんに安心感を与えられる
敬語を使うことで、患者さんは「丁寧に対応してもらっている」と感じ、安心感を得ることができます。
特に不安や緊張を抱えている患者さんにとって、看護師の丁寧な対応は心の支えとなります。
- プロフェッショナルな印象を与える
敬語を使うことで、看護師としての専門性や誠実さをアピールすることができます。
患者さんに信頼してもらうためには、適切な言葉遣いが重要です。
敬語を使うデメリット
- 過剰な敬語が疲労感を生む
長時間勤務の中で、必要以上に丁寧な言葉を使い続けると、看護師自身が疲れてしまいます。
結果として、患者対応の質が低下する可能性があります。
- 患者さんが勘違いする可能性がある
過剰な敬語を使うことで、一部の患者さんが「自分は偉い」「もっと要求していい」と勘違いすることがあります。
このような誤解がトラブルの原因になることも少なくありません。
現場の状況に応じた対応が求められる
看護師としての言葉遣いや態度は、現場の状況によって柔軟に変える必要があります。
たとえば、救急外来では迅速な対応が求められるため、シンプルで分かりやすい言葉を使うことが重要です。
一方で、入院病棟では、患者さんとの信頼関係を築くために、もう少し丁寧な言葉遣いが求められることがあります。
また、患者さんの年齢や状態に応じて、言葉遣いを変えることも必要です。
耳の遠いご高齢の患者さんには、わかりやすい言葉を使うことが優先されますし、小児科では、子どもにも理解できるような表現を心がける必要があります。
同僚や上司との関係でも言葉遣いがカギに
看護師としての仕事は、患者さんだけでなく、同僚や上司との連携が欠かせません。
しかし、現場では上司や同僚の言葉遣いにストレスを感じることも少なくありません。
たとえば、上司が「〇〇やっといて」とタメ口で指示を出す場合や、同僚間で不適切な言葉遣いが横行している場合、職場全体の雰囲気が悪くなります。
看護師が患者さんに対して敬意を持って接するためには、まず職場内でのコミュニケーションが健全であることが大切です。
まとめ
患者さんに敬語を使うことは看護師としての基本ですが、必要以上に謙る必要はありません。
私たちは患者さんの健康を守るために働く専門職であり、決して「召使い」ではありません。
それにしても、過剰に敬語を使えと言われる風潮、正直疲れますよね。「〇〇させていただきます」といった表現を一日に何十回も繰り返すのは、本当にしんどいです。
患者さんの中には横柄な態度を取る人もいますが、それに振り回されず、自分のペースで仕事をすることも大切だと思います。
最終的には、適切な敬語を使いつつ、自分の負担を軽減する方法を見つけることが重要です。
看護師の仕事は大変ですが、自分自身を守りながら、患者さんにとってベストなケアを提供できるよう努力していきたいものです。