嚥下機能低下時 胃管挿入

看護師 免許証 資格 白衣の探偵

 

嚥下機能が低下して経口摂取が難しくなった患者さんに対し、胃管や胃瘻を利用した経管栄養が提案される場面は、医療現場では日常的に見られる光景です。

この選択肢が患者さんの生命をつなぐために重要な手段であることは間違いありません。

しかし、その背景において「患者本人の意思」がどれだけ尊重されているのかという問題に直面することも多いのが現実。

特に看護師として現場にいると、患者さんの意向、家族の希望、医療チームの判断の間に立たされ、葛藤を感じることが少なくありません。

この記事では、嚥下機能低下時の胃管挿入にまつわる課題や現場での苦悩、そして患者本人の意思をどのように尊重していくべきかについて詳しく考えていきます。

看護師の視点から感じる現場のリアルな状況と、そこから見える改善のためのアプローチについて、深く掘り下げてみます。

 

 

嚥下機能低下時における胃管挿入の現実

 

嚥下機能が低下し、経口摂取ができなくなると、患者さんの栄養補給の手段として胃管や胃瘻が検討されます。

これは、患者さんの命を守るための医療行為として当然の流れです。

しかし現場では、これが必ずしも患者さん本人にとって良い選択肢であるとは限らないと感じることがあります。

 

よくあるケースとして、患者さんが胃管挿入に強い拒否反応を示し、自分で抜いてしまう行動が繰り返されることがあります。

患者さんにミトンを装着して自己抜去を防ごうとすることもありますが、慣れてくるとミトンを装着したままでも胃管を抜いてしまうことがあります。

そのため、抑制帯を使用せざるを得ない状況に発展することも少なくありません。

 

こうした対応をするたびに、看護師として「本当にこれが患者さんのためになっているのか?」と疑問を抱くことがあります。

胃管や抑制具による対応が患者さんに与えるストレスは非常に大きく、時には暴言や暴力的な行動につながることもあります。

 

それでも家族からの「命をつないでほしい」という強い要望や、医療チームの「栄養補給を優先すべき」という判断に基づき、この状況を継続せざるを得ない現実があります。

このような場面で、看護師は患者さんの苦痛に寄り添いたいという気持ちと、家族や医療方針に従う責任の間で板挟みになります。

 

 

 

家族の希望と本人の意思の乖離

 

嚥下機能が低下しても、患者さんが胃管挿入を拒否する場合があります。

その際、家族の希望が強く反映される場面は多くあります。

家族としては「大切な人に少しでも長く生きてほしい」という思いがあるため、延命のために胃管挿入を求めることが一般的です。

その愛情や切実な願いは十分に理解できますが、現場ではその希望が患者さん本人の意思や生活の質を軽視する結果になることが少なくありません。

 

たとえば、認知症が進んでいる患者さんが胃管の不快感を訴えて繰り返し自己抜去を試みる姿を見ながらも、「家族が望んでいるから」という理由で治療を続ける場面。

患者さん自身が明確に「嫌だ」と伝えることができなくても、表情や動き、行動から「胃管を嫌がっている」というサインが明らかに見えることがあります。

それでも家族が「できるだけ生きていてほしい」と願う場合、その意向を優先することになるのが現実です。

 

さらに、家族の希望が強い背景には、医療現場での説明が十分に行われていないことも影響しています。

「胃管挿入が最善策」という説明だけがされると、家族も「これしか選択肢がない」と思い込んでしまうことがあります。

実際には、「嚥下機能が低下しても自然な看取りを選択する」という道もあるはずですが、その選択肢が提示されないまま、延命治療が進むことも少なくありません。

 

 

 

看護師としての葛藤と苦悩

 

胃管挿入が患者さんの苦痛を伴う場面を目の当たりにすると、看護師としての葛藤が募ります。

「患者さんが嫌がっていることを続けるのは正しいのだろうか」と悩む気持ちが消えることはありません。

また、認知症の影響で自分の意思を明確に伝えられない患者さんに対して、家族の判断だけで治療が進む状況に直面すると、看護師としての使命感と無力感が交錯します。

 

現場では、「またこのパターンか」と思ってしまうこともあります。

胃管挿入や抑制具の使用に抵抗する患者さんと、それを止められない看護師、そして家族や医師との間で同じような葛藤を何度も繰り返す日々。

 

最初の頃は強い違和感を覚えた場面も、慣れが生まれてしまうことで「仕方ない」と感じる自分に気づく瞬間があります。

この「慣れ」が逆に自分を苦しめることもあるのです。

 

さらに、家族との会話の中で「本当に本人のためを思っているのか?」と疑問に感じることもあります。

家族の希望が表面的には「延命」でも、その裏には「最期を見届けたくないから医療に任せたい」という心理が働いている場合もあります。

そうした状況を目の当たりにすると、看護師として「もう少し本人の気持ちを考えてあげてほしい」と切実に思います。

 

 

事前の意思確認と看護師の役割

 

嚥下機能が低下してからではなく、元気なうちに「延命治療をどうするか」について本人の意思を明確にしておくことが理想的です。

具体的には、「経口摂取が難しくなった場合、胃管や胃瘻を使うかどうか」や、「どの段階で延命治療を中止するか」といった内容を文書で記録しておくことが重要です。

これにより、患者さんが意思を伝えることが難しい状況になったときでも、家族や医療チームが迷わずに対応できます。

 

看護師としては、患者さんの声を可能な限り拾い上げる努力を続けることが大切です。

認知症が進んでいる患者さんであっても、非言語的なサインから気持ちを汲み取ることができます。

表情や態度、行動の変化を記録し、それを家族や医療チームに伝えることで、治療方針の決定に影響を与えることができるかもしれません。

 

また、家族への説明も看護師の重要な役割の一つです。

医師からの説明が不十分だった場合でも、看護師が補足的に説明を行い、「延命治療だけが選択肢ではない」ことを家族に理解してもらう努力を続けることが必要です。

 

 

 

自然な看取りを選ぶという選択

 

嚥下機能が低下した患者さんにとって、経管栄養が必ずしも最善の選択肢とは限りません。

場合によっては、自然な形で最期を迎える「自然な看取り」が患者さんにとって最も負担の少ない道であることもあります。

この選択肢を家族に提案することは簡単ではありません