病棟で働く看護師として、日々の業務は多忙を極め、患者のケアだけでなく、医師や家族との連携も不可欠です。
特に、高齢患者の「命をつなぐだけの治療」に携わる際、看護師は多くの葛藤を抱えます。
延命治療が、本人の意思を反映しているとは限らない場面に直面することも多く、これは看護師としての使命感や倫理観に深い影響を与えます。
患者の意思は正直関係ない!?
延命治療が実施される場面では、患者本人がすでに意思表示をできない状態に陥っていることが多いです。
例えば、意識を失ったり、認知機能が低下している患者に対して、周囲の人々、特に家族が治療方針を決定することが主流です。
本人が「これ以上の治療は望まない」と事前に意思を表明していても、家族の意見が優先され、医師の判断に従って治療が進むことがあります。
このようなケースで看護師は、自分の心の中に違和感を抱きつつも、指示に従わざるを得ません。
看護師として、患者が本当に望む治療とは何かを見極めることが大切ですが、現実には難しい場面も多いです。
医療ガイドラインには、患者本人の意思決定を最優先にすることが求められていますが、これが実際に行われているかどうかは疑わしい状況も見受けられます。
現場では、延命措置が進められ、「治療が患者のためになっているのか」という疑問が拭えないことがあるのです。
看護師が抱えるジレンマ – 治療の意義とは
看護師として日々感じるジレンマの一つは、「この治療は誰のために行われているのか」という疑問です。
高齢の患者が、骨が浮き出るほど痩せ細り、筋力も低下している中で、無理な治療が施されることがあります。
これは、患者のためというよりは、家族の安心や病院の体制に沿ったものであることがしばしば。
場合によっては患者に対して、大量の輸血が行われたこともあるでしょう。
患者は意識がなく、体も拘縮しており、口を開いて自分の意志を伝えることは不可能な状況もあるでしょう。
それにもかかわらず、家族の希望に基づいて治療は続行されている場面もあるのではないでしょうか。
この時の看護師としての感覚は、やるせなさと共に疑問が生まれるはずです。
「これが本当に患者のためなのか」という考えが心の中を巡り、看護師としての職務に限界を感じる瞬間になるでしょう。
看護師の声はどこまで届くのか
看護師は医療チームの中で患者に最も近い存在です。
しかし、治療の決定においては発言権が制限されることが多く、医師や家族の意向が優先されることがほとんど。
この状況では、看護師は黙々と指示に従うしかありません。
「延命治療を続けるべきではないのでは?」という考えがあっても、決定権は医師や家族にあります。
看護師の立場では、倫理的な疑問を抱えながらも、その感情を業務に持ち込むことはできません。
こうした現場の状況により、看護師は心理的負担を抱えます。
自分が行っている治療やケアが本当に患者にとって最善なのか疑問に感じながらも、声を上げることは難しいのです。
病院の制度や方針が優先されることで、看護師は治療のサポート役としてだけ機能することが多く、患者の代弁者としての役割を果たすことは難しくなります。
延命治療と家族の期待
家族が延命治療を望む背景には、さまざまな感情が絡んでいます。
「少しでも長く生きていてほしい」という家族の思いは理解できますが、それが患者にとって負担になることもあります。
家族が延命を望む場合、患者の苦痛は無視されがちです。
患者がすでに意識を失い、自分の体が言うことを聞かなくなっている中で、強制的に治療が行われることがあるのです。
看護師はこのような場面で「本当にこの治療が正しいのか」と心の中で自問します。
家族の感情を否定することはできませんが、それにより患者が不必要な苦痛を味わうことに違和感を感じることも少なくありません。
こうした状況で看護師が抱える葛藤は深刻です。
看護師の精神的負担
看護師として働いていると、日々の業務は患者のケアだけにとどまりません。
特に、延命治療が患者の意思に反して行われる場合、その実行者としての役割を担うことは、看護師にとって精神的な負担となります。
患者が意思表示をできない状態で治療を続けることは、看護師にとっては倫理的なジレンマを抱える原因となります。
ある看護師は、「枯れ枝のように痩せ細った患者に輸血を続けることが、どれだけ辛かったか」を振り返ります。
これは患者のためというより、病院の方針や家族の期待を満たすための治療であることが多いのではないでしょうか。
看護師がその場で治療方針に異議を唱えることはほとんど不可能であり、これが看護師が職務を続ける中で精神的な消耗を感じる要因の一つです。
自分の意思を事前に表明する重要性
「生きるか死ぬかの場面で何を望むか」は、患者本人が元気なうちに話し合っておくことが求められます。
看護師として、患者が事前に意思を明確にすることで、延命治療に関する混乱や悩みを軽減できると感じています。
意思表示がなされていれば、医師や看護師、家族もその決定に基づいて治療方針を決めることができ、患者にとってより良いケアが提供されるでしょう。
しかし、現実はその理想とは異なります。
実際には、多くの患者が意思表示をせず、緊急時に家族が代わりに決断を下します。
これにより、家族は自分たちの感情や不安から最善と思われる判断をしますが、それが患者にとって望ましい結果とは限りません。
医療現場の変革が必要な理由
看護師として「本当に患者中心の医療が実現しているのか」と疑問を抱くことがあります。
患者の声が聞こえない中で行われる治療は、患者本人にとっても、ケアに携わる看護師にとっても辛いものです。
これからの医療は、患者の意思をもっと尊重し、医療現場でのケア方針が透明であることが求められます。
患者が望む治療の内容を話し合う機会をもっと積極的に設けることが、看護師が感じる違和感やストレスを軽減するための一歩です。
私達看護師として望む未来
患者が本当に望む治療を受けられるよう、医療制度やガイドラインの改善が必要です。
医療現場で働く看護師が声を上げ、患者の意思を守るための役割を果たせるような環境が整えば、看護師自身も働きやすくなります。
看護師は、単なる医療の実行者ではなく、患者と家族の橋渡し役であり、ケアの重要な一部です。
そのため、看護師が発言し、意見を述べることが尊重される医療体制を望んでいます。
まとめ
看護師として働く中で、命をつなぐだけの治療がもたらす現実に直面することは少なくありません。
その中で葛藤を抱え、医療現場の限界を感じることもありますが、最終的には患者が尊厳を持って生き、人生を終えることができるようなケアを提供したいと願っています。
病院が本当に患者中心のケアを実現できるよう、看護師もまた変革の一端を担う存在であるべきです。
これが看護師としての使命であり、未来に向けた医療の姿であると信じています。