「准看護師のくせに上司!」と思った場面はありませんか?
看護師には准看護師と正看護師の2種類があります。
准看護師は、各都道府県知事の承認を得て、看護師免許を取得しています。
対して正看護師は、厚生労働大臣の承認を得て、看護師免許が発行されています。
つまり准看護師と正看護師の違いは、免許の発行先が違うのです。
与えられる仕事内容は全く変わりません。
しかし実際の現場では、その扱いに差を感じる場面が多々見られます。
准看護師は正看護師よりも下に見られることがあり、特に准看護師で役職に就いている方は「准看護師のくせに…」と陰口を言われてしまうことも。
この記事では准看護師が上司になれるのかという部分を解説しつつ、准看護師と正看護師の差についても合わせて解説していきます。
正看護師の癖にそんなんもできねえのかよ!
「正看護師の癖にそんなんもできねえのかよ!」
「准看護師の癖にそんなんもできねえのかよ!」
今考えればどっちもどっち状態でしたが、私がかつて勤務していた病院で、正看護師と准看護師との間に起こる対立について、驚きの光景を目にしたことがあります
その光景は、看護師同士が怒鳴り合い、陰で「准看のくせに」との聞こえるように話していました。
この状況は、准看護師と正看護師の対立構造が浮かび上がってくるもので、その背景ついて考えてみたいと思います。
何故、准看護師の癖に・何故、正看護師の癖に・・
看護現場における正看護師と准看護師の対立は、役割やスキルの違い、そして年齢などが関係してきます。
正看護師は高度な専門性を持ち、複雑な医療行為や臨床判断を行う役割を果たします。
一方、准看護師はサポート役として、基本的なケアやデータ収集などを行う事が多いです。
この役割の違いとプライドが原因だと私は考えています
怒鳴りつけてくる准看護師さんも目撃しました。
これは、ストレスや疲労、コミュニケーションの不足などが原因となり、感情的な行動につながるケースです。
例えば、ある日の夜勤で、忙しい時間帯に准看護師の方が正看護師に向かって怒鳴りつける場面に遭遇しました。
これは、病院内のストレスや疲労が高まり、感情のコントロールを失った結果であったと思います。
「准看護師のくせに」というフレーズが陰で使われることもありました。
この言葉は、准看護師の役割やスキルそして不満に対して、正看護師が十分な評価をしていないと感じる場合に発する言葉です。
同様に、「正看護師のくせに」との考え方も、准看護師から見れば、「私でも出来る事を・・」と下に見られたくない心理が働いた時に爆発する言葉です。
今回は特に准看護師が年上で経験年数もあるのに、正看護師に「准看護師のくせに!」と言われる場合どうしたらいいのか次で考えていきましょう。
准看護師のくせに上司になれるのか?
「准看護師では管理職になれない」と耳にする方も多いのではないでしょうか。
ですが准看護師であっても上司や管理職になれます
ただしそれには「ある条件」をクリアしなくてはなりません。
准看護師の歴史を踏まえつつ解説していきましょう。
准看護師の歴史
1890年 | 産婆規則制定 | 20世紀半ばまで現在の「保健師助産師看護師法」というような、一体化された法律がなくバラバラの規則でした。
1942年に国民医療法が制定され、規則は法律へと変わっていきます。 |
1915年 | 看護婦規則制定 | |
1941年 | 保健婦規則制定 | |
1942年 | 国民医療法制定 | |
1948年 | 保健婦助産婦看護婦法制定 | 1951年の戦後間もない頃より、人口が爆発的に増加し始めます。
これに伴い不足した看護師を補うため准看護師の制度が導入されました。 |
1951年 | 准看護婦制度導入 |
准看護師は正看護師の人数不足を補うために作られた制度。
正看護師は高校卒業後、3年間の通学により取得が可能な資格ですが、当時の日本において女性の進学率は非常に低いものでした。
そのため准看護師という資格を作り、中学校卒業後、2年間の通学という短い期間で看護業務に携われるようにしたのです。
では本題に入っていきましょう。
准看護師について規定している保健師助産師看護師法の第6条にはこう規定されています。
『この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。』
この文面にある「看護師」というのは正看護師のことです。
つまり准看護師は医師、歯科医師、そして正看護師の指示を受けて仕事をしなくてはなりません。
これは正看護師からの指示を受けて仕事をすることはあっても、准看護師が正看護師に指示を出すことはできないということです
准看護師が上の立場に立った時、部下は准看護師だけでなく正看護師もいますよね。
病院や施設における上司、つまり管理職のような立場についた時、部下である正看護師に指示を出すことが法律違反に当たってしまいます。
この場合、役職に就くことは難しいでしょう。
では准看護師は絶対に役職に就けないのか、と言われるとそんなことはありません
例えば病院における「主任」というポジション。
このポジションは、一般的に管理職とみなされないことが多く、扱いとしては一社員になります。
そのため准看護師が主任のポジションについても、管理職ではないため法律違反ではないとされているのです。
またそれ以外の場合においても、准看護師が上司になれることがあります。
それは勤務先に正看護師がいない場合です。
全員准看護師の場合、同じ立場の者に指示を出す形になるので、これも法律違反にはなりません。
病院規模になると難しいでしょうが、小さい規模のクリニックや診療所、介護施設などであれば管理職になれる機会があるかもしれませんね。
実際に准看護師が上司になっている場合の注意点
准看護師が上司や管理職に就いている場合、注意しなくてはならないことが2点あります。
・責任の範囲
・スタッフ間の人間関係
仕事を円滑に進める上で、非常に重要なポイントです。
それぞれ確認していきましょう。
責任の範囲
基本的に准看護師は、正看護師の指示に従って療養上の世話やケアを提供します。
看護においては、どうしても正看護師が優位な立場にあることは明らかです。
そのため、何か看護上のトラブルが発生した際、責任の所在が曖昧なところがあります。
もちろん一般的には、上司である准看護師が責任を取る立場にありますが、場合によってはケアを提供するよう、指示を出した正看護師が責任を取らされるということも考えられる話です。
だからこそ准看護師が上司となる場合、責任の範囲を明確にしておく必要があるのです
スタッフ間の人間関係
准看護師と正看護師では、どうしても准看護師は下に見られがちです
それにも関わらず、准看護師が正看護師より上司や上の立場にいたらどうでしょうか。
みんながそうとは言いませんが、少なからず反感を持つ方もいますし、「准看護師のくせに…」と陰口を言う人もいます。
人によっては退職を考える方もいるほどです。
そうならないよう準看護師・正看護師問わず、スタッフ間で交流を図り、関係性を築いていく必要があるのです。
准看護師を続けている人の特徴
准看護師を続けている人の特徴として、取る必要性がなかったという点が挙げられます。
平成29年看護関係統計資料集にある看護師・准看護師の就業場所を見てみると、正看護師の病院就職率が約8割を占めているのに対し、准看護師の場合は約2割程度となっています。
では准看護師は他にどんな場所で働いているのかというと、診療所や介護関係が残りのほぼ6割を占めている状況です。
診療所や介護施設では、就業している看護師自体が少ないことや准看護師が多いことも相まって、そもそも責任問題や人間関係のトラブルが起きません。
正看護師の資格を取る必要がない環境で就業した結果、准看護師として働き続けている方が多いのです。
正看護師がいるのに准看護師を長年続ける理由
准看護師を続けている方々を見ていくと一つの要因として、単に「めんどくさいから」正看護師にならないのでは?と考えてしまう事があります
(スミマセン)
何年も准看護師として勤務し続ける人もいます。
ある意味、准看護師としての役割に満足感を持ち、正看護師と意見を交わせるくらいの自信があるからなのかもしれません。
准看護師の中には、看護師としての自信をしっかりと持っており、患者さんや同僚との意見交換を積極的に行える自信を抱いていることがあります。
まずは准看護師から
准看護師のなる理由の一つに、資格取得までの期間と学費の面での利点が挙げられます
准看護師は、正看護師に比べて資格取得までの期間が短く、学費も安い傾向があります。
これにより、正看護師に昇進するために必要な負担を軽減できるため、経済的なメリットを享受しながら働き続けることができます。
「准看護師のくせに」という陰口が耳に入ることもあるでしょう。しかし、これに屈することなく、准看護師としてのプライドを持ち続ける人々も存在します。
もちろん、准看護師としての経験を活かしながら、将来的に正看護師を目指す人も多くいます。
准看護師は正看護師と差別されてしまう?
同じ職場内で正看護師の方がいる場合、扱いに差が生じてしまうことがあります。
業務内容は同じでも、昇任のペースや給料は変わってくるでしょうし、上司からのいわれのない差別を受けることもあるかもしれません。
ですが就業場所を選べば、そういった問題は生じないことがほとんどです。
准看護師として働き続けるか、それとも正看護師へキャリアアップするか、ご自身の希望と照らし合わせて検討してみてください
まとめ
准看護師が上司になれるのか、その職種の時代背景から解説してきました。
いかがでしたでしょうか。
・准看護師でも場合によっては上司になれる
・准看護師が上司の場合、責任の範囲と人間関係に気をつける必要がある
准看護師でも仕事のできる方はいますが、「准看護師のくせに!」と言われている人がいるのも事実。
看護師という女性の多い職業においては、偏見や差別が少なからずあるのが現実です。
上司という立場になる以上、こういった問題には立ち向かっていかねばなりません。
今後のキャリアパスを意識しながら、良い関係性を築いて働いていけると良いですね。