看護師として働く中で、スキルアップのための資格としてよく知られている「認定看護師」。
この資格は、定められたカリキュラムを受講し、難関と言われている試験に合格しなければ取得できません。
そんな取得が難しい資格ではありますが、2020年8月に日本看護協会が「新たな認定看護師制度」を打ち出したことで、現行の認定看護師教育は廃止される事になりました。
本記事では認定看護師教育について解説し、現行の認定看護師教育と新たな認定看護師教育の違いや2020年度から始まっている新制度についてご紹介していきます。
そもそも認定看護師教育とは?
認定看護師とは、特定の看護分野における熟練した看護技術および知識を用いて、あらゆる場で看護を必要とする対象に、水準の高い看護実践ができる者を指しています。
認定看護師は特定の看護分野において、「高い臨床推論力と病態判断力の基づき、熟練した看護技術および水準の高い看護」「看護実践を通した看護指導」「看護職などに対し相談・コンサルテーションを行う」といった役割を持っています。
認定看護師は日本看護協会が定めた21の認定看護分野において取得することができ、その資格取得のためには看護師免許を有し、通算5年以上の実務研修があること(うち認定看護分野における臨床経験が3年以上)を前提とし、その後認定看護師教育機関に入学・卒業後、認定看護師認定審査に合格しなくてはなりません。
この試験は難関とされており、認定看護師試験の合格率は非常に低くなっています。
- 救急看護
- 皮膚・排泄ケア
- 集中ケア
- 緩和ケア
- がん化学療法看護
- がん性疼痛看護
- 訪問看護
- 感染管理
- 糖尿病看護
- 不妊症看護
- 新生児集中ケア
- 透析看護
- 手術看護
- 乳がん看護
- 摂食・嚥下障害看護
- 小児救急看護
- 認知症看護
- 脳卒中リハビリテーション看護
- がん放射線療法看護
- 慢性呼吸器疾患看護
- 慢性心不全看護
認定看護師教育を2026年度に廃止
認定看護師制度を作った日本看護協会より、2018年に認定看護師の現行の制度は廃止することが決定されました。
現時点で決まっていることは以下の3つの事項です。
(1)現行の認定看護師制度は2026年度をもって廃止
(2)現行の認定看護師教育機関の認定審査は2019年度をもって廃止、2020年度以降は現行の認定審査は行わないこと
(3)現行の認定看護師教育機関は2022年度移行の更新審査は2026年度までを対象とし、現行の制度に対応する認定看護師教育機関は2026年度をもってなくなること
認定看護師教育が一新される背景には、これからの日本の医療ニーズの変化を捉えた結果とも言えます。
超高齢社会の日本は複数の疾病を抱える高齢者や複雑化した疾患を抱える患者、また病院中心の医療から地域や在宅中心の医療へと広がりつつあることで、「治す医療」から「治し支える医療」へと転換が必要と考えられたためです。
そのためこれまでの認定看護師教育に組み込まれていなかった特定行為研修を必須とし、認定看護師の質の向上が必要と日本看護協会は考えたようです。
特定行為研修では看護の専門性を基盤とした上で、臨床推論力や病態判断力といったあらゆる場でも対応できるような認定看護師の養成を目的としています。
また新たな認定看護師になっても求められる役割はほとんど変わりません。
ただしこれまで以上に看護現場が広がることから対象が増え、さらに高い臨床力が必要となってきます。
新たに特定行為研修が組み込まれた認定看護分野
特定行為研修も全ての看護分野にあるわけではありません。
特に2020年度以降を目処に、新たに特定行為研修が含まれた認定看護師教育を開始する分野は以下の10分野です。
・がん薬物療法看護
・生殖看護
・在宅ケア
・呼吸器疾患看護
・心不全看護
・脳卒中看護
・腎不全看護
・摂食嚥下障害看護
・小児プライマリケア
・クリティカルケア
上記の10分野以外にも、2026年までは現行の認定看護師教育が行われつつ、かつ2020年度以降、特定行為研修を組み込んだ認定看護師教育を開始する分野として、以下の9分野があります。
・緩和ケア
・認知症看護
・手術看護
・糖尿病看護
・皮膚排泄ケア
・感染管理
・がん放射線療法看護
・乳がん看護
・新生児集中ケア
このように2020年度を目処にさまざまな分野で認定看護師教育が改変しています。
特定行為研修とは
これからの認定看護師教育に特定行為研修が含まれることをお伝えしてきました。
特定行為研修とは、看護師が手順書により特定行為を行う場合に、必要な理解力や思考力、判断力ならびに高度な専門的知識や技能の向上を図るための研修です。
手順書とは医師や歯科医師が、看護師に診療の補助を行わせるために指示として作成する文書で、診療の補助の内容や特定行為を行うときに確認するべき事項などが記載されています。
厚生労働省によると、特定行為に係る手順書例として、「侵襲的陽圧換気の設定の変更」や「硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整」など、38行為の手順書例が記されています。
参考 厚生労働省 平成 27 年度 看護職員確保対策特別事業 特定行為に係る手順書例集
特定行為研修を受講後、この手順書があれば、素早く迅速な処置や治療に進むことができ、看護師の働きに期待されています。
2020年度から新制度が導入される?
新たな認定看護師制度に移行するにあたって、2021年4月より新たな認定看護師への移行が始まりました。
2020年度までに資格を取得した認定看護師は、「A課程認定看護師」とされており、A課程認定看護師は特定行為研修を受講・修了したのちに移行手続きを行わなくてはなりません。
移行手続きをしない場合、現在取得している認定看護分野の認定看護師資格が継続され、統合した分野は認定されません。
移行手続きは2021年4月以降より開始予定のため、認定看護師資格をお持ちの方は忘れないように特定行為研修と移行手続きを行うようにしましょう。
認定看護師を目指す人はどうすればいい?
認定看護師の資格を取得済みの方は特定行為研修を受講・修了後に以降手続きをしてください。
これから認定看護師を取得したいと考えている方は、ぜひ「B課程認定看護師教育機関」で教育を受けるようにすると良いでしょう。
B課程認定看護師教育機関はこれまでの認定看護師教育だけでなく、特定行為研修もカリキュラム内に含まれており、効率よく認定看護師の勉強ができます。
なおB課程認定看護師教育が行われている教育機関は全国各地に8つあります。
全国各地にあるので、希望の分野や近い教育機関などで選択するようにしてください。
毎年B課程認定看護師教育機関の申請をしている場所も増えていますので、今後はもっと数も増えてくるでしょう。
まとめ
認定看護師の廃止や新制度についてお話していきました。
現行の認定看護師制度は2026年度をもって終了となります。
これから認定看護師を取得するのであれば、「B課程認定看護師教育機関」で教育を受けるようにしましょう。
この先も時代の流れと共に制度が変わることもありますが、その都度いろいろと解説していきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。