皆さんはSWOT分析という言葉をご存知でしょうか?
SWOT分析とは競合や法律、市場トレンドなどの会社を取り巻く外部要因と、会社内の資産や商品といった内部要因を、それぞれプラス・マイナスに分析することです。
これを行うことで、今後の戦略決定や最適化などができるとされています。
ここからが本題です。
実はこのSWOT分析は看護においても活用できると言われています。
ではどのように活用していくのでしょうか。
本記事ではSWOT分析についてご紹介したうえで、病棟や看護師個人においてどのように用いていくのかを解説してきます。
ぜひ最後までお付き合いください。
看護師によるSWOT分析とは?
まずSWOT分析の「SWOT」とはなんのでしょうか?
実はそれぞれ、ある英単語の頭文字を取っています。
Strength:強み
Weakness:弱み
Opportunity:機会
Threat:脅威
それぞれの単語の頭文字からSWOT分析と呼ばれるようになりました。
ビジネスにおいて、このSWOT分析は非常に重要なものだと言われています。
なぜならビジネスでは、常に会社を取り巻く環境が流動的に変化し、かつ会社の資産価値も変わっていくためです
ではこれを病院に当てはめてみるとどうでしょうか?
具体例を出してみますね。
今年で開設70年になる総合病院で、三次救急病院として、地域医療を担ってきた。
一般病棟12部署、手術室、集中治療室2部署がある。
地域でも1番の病床数を誇り、新人教育にも力を入れているが、中堅層の離職率が高い。
看護師の月残業時間は平均40時間。
近隣に高速道路が作られたことで利便性が高まり、住民の数が増加。最近では訪問診療や訪問看護に力を入れている。
病院の経営戦略会議で看護部長が、SWOT分析することになりました。
そうすると以下のようになります。
S:強み
- 70年にも及ぶ病院運営
- 総合病院としての診療科目の豊富さ
- 三次救急として地域医療を担ってきた
- 地域で1番の病床数
- 新人教育に力を入れている
W:弱み
- 看護部長のリーダーシップ不足
- 中堅看護師の離職率の高さ
- 看護師不足による精神的、身体的負担
- 専門スキルを持つ看護師の不足
- 平均残業時間の多さ
- 病棟、手術室、集中治療室の稼働率
O:機会
- 地域医療を担う立場
- 訪問診療や訪問看護に力を入れている
- 近隣住民の増加
T:脅威
- 医療費の増加
- 近隣住民の所得低下
- マンパワー不足による看護サービスの悪化
- 別病院への患者流出
上記が事例から考えられるSWOT分析になります。
事例では簡単な情報しか載せていないので、ご自身がお勤めになっている病院の経営方針や経営状況、看護師の勤務状況などのさまざまな要因を追加し、もっと密度の濃いSWOT分析をしてみてください。
SWOT分析で見えてくる病棟の現状
上記では看護部長が病院全体に対して、SWOT分析した事例をご紹介しました。
それでは一般病棟に勤務する看護師が、病棟に対しSWOT分析するとどうでしょう。
また事例をあげてみますね。
消化器外科に勤める主任看護師。
病床数は40床で、稼働率は常に90%超え。
毎日手術前後の患者の受け入れがある。
患者の平均入院日数は10日程度。
主任として新人教育担当についたものの、主任業務の複雑化や病棟の忙しさもあいまって残業時間が増加。
日々の業務に追われて、満足のいく患者対応ができない。
S:強み
- 稼働率の高さ
- 手術前後の患者受け入れ
- 主任看護師として勤務
W:弱み
- 残業時間の増加
- 主任業務の複雑化
- マンパワー不足
- 患者対応の悪化
O:機会
- 外科病棟ならではの患者の流動性
- 患者の平均入院日数
- 新人教育による人材育成経験が積める
T:脅威
- 病棟評判の悪化
- 主任業務の煩雑さ
上記がこの事例のSWOT分析になります。
病棟という環境下だからこそ、起こる問題も散見されますね。
皆さんの勤務する病院では、日々の病棟業務が忙しく、満足のいく患者対応ができないということはありませんか?
業務が忙しい理由には、「看護師の業務が多すぎる」「看護師の数が足りていない」などが理由にあげられると思います。
中には「人間関係が悪く、連携して業務に取り組めない」という病棟もあるかもしれませんね。
さらに新人看護師が入社する時期は、新人看護師のできない業務を中堅看護師が行うことで、結果的に中堅看護師に負担がかかってしまうことも。
SWOT分析をすることで、病棟の問題も浮き彫りになってきます。
SWOT分析は看護師個人にも使える?
病院や病棟という大きな集合体を対象に例を交えてSWOT分析をご紹介してきました。
では看護師個人にもSWOT分析は適用できるのでしょうか。
答えは「はい」。
SWOT分析は個体、複数体に限らず使用できます。
看護師個人に用いる場合においても、ぜひ上記で挙げた事例のように、ご自身の状況を書き出してみてください
例えば中堅層で転職を考えている場合や、将来的にスキルアップを考えているため認定看護師の資格を取得したい場合など。
ご自身の状況を、SWOT分析することで浮き彫りになってくる問題もあります。
例えば私の場合の事例をご紹介しましょう。
私、20代後半。
現在は育児のため離職中。病院・クリニックと2社経験し、臨床経験は合わせて4年程度。
将来的に看護師として復帰したい気持ちはあるが、子どもが小さいため夜勤のある病院への復職は考えていない。
復職する場合、子どもは保育園に預ける予定。実家や頼れる家族は遠方におり、急な子どもの体調不良時には、勤務先と相談して休みをもらわなければならない。
どんどんスキルアップしていきたい性格。
S:強み
- 20代後半
- スキルアップに積極的
- 長期的な就業が可能
W:弱み
- 臨床経験が4年程度
- 4年という短い期間での転職経験
- 夜勤ができない
- 子どもを理由に仕事を休まなくてはならないことも
O:機会
- 就職先の選択
- パートタイマーやアルバイト、派遣勤務という選択
- 新しい知識、技術の獲得
T:脅威
- 夜勤ができないことによる給料水準の低下
- 急な休みに対応ができない
いかがでしょうか。
こうしてみると私が復職を考えたとき、就職先の選定に困ることが考えられますね。
「夜勤ができない」=病棟での正社員雇用はできないでしょうし、子どもを保育園に預けるため残業の多いところや、クリニックのように終業時間が遅いところも難しいでしょう。
このように個人に対してもSWOT分析は適用できます。
ご自身の状況や今後のビジョンを見いだすのにも十分使える手法なので、ぜひ取り入れてみてください
まとめ
看護師におけるSWOT分析の手法について、例を交えながら解説してきました。
- SWOT分析とは「S(強み)」「W(弱み)」「O(機会)」「T(脅威)」を表す英単語の頭文字をとったもの。
- 病院や看護師個人に用いることで、経営戦略や今後のビジョンを見える化できる。
SWOT分析を取り入れることで、ご自身を取り巻く環境や将来のなりたい姿を浮き彫りにできます。
本記事を用いて、ぜひご自身の状況と照らし合わせてみてくださいね。